腎臓の病気
腎臓は尿を生成を通じて、体の中にたまった老廃物や余分な水分を外へ出して、血液をきれいにする機能があります。また、赤血球の生産をうながす「エリスロポエチン」やレニン、プロスタグランディン、カリクレイン、キニンなどの血圧を調整するような、ホルモンをつくって分泌しています。
腎不全
腎不全とは、何らかの原因で腎機能が障害され、体液のバランスをとることが維持できなくなった状態をいいます。急激に発症し回復の可能性を有する急性腎不全と、慢性腎疾患により慢性、進行性に不可逆的な腎機能低下をきたす慢性腎不全に分けられます。
- 急性腎不全:出血や脱水により血流量が低下することに起因する腎前性、腎実質そのものの急性障害に起因する腎性、尿路の閉塞により尿を体外に排出できないことに起因する腎後性に分けられます。
- 慢性腎不全:原因は様々ですが、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、高血圧などによる腎硬化症、のう胞腎が透析療法に至る疾患として多く認められます。
症状
- むくみが出る
- 尿量が少なくなった
- 夜間にトイレに行く回数が増えた
- 尿の回数が増えた
- だるさが抜けない
- 貧血による動悸や息切れ、めまいや立ちくらみがでる
- 発疹がないのに体にかゆみがある
腎臓機能が低下すると、上記のような症状が現れることがあります。放置しておくと、生命に危険を及ぼす恐れもあります。比較的初期に病気が発見されれば、進行を食い止める治療ができる場合が多いのですが、病状が進行すると、透析療法や腎移植などの必要が出てきますので、上記にあるような症状が出たら、早めに当院にご相談ください。
腎臓がん
成人のがんの約2~3%を占め、男性の割合は女性の2倍です。危険因子として、喫煙、化学物質の暴露、肥満があります。初期症状はほとんどなく、人間ドックや健診でのエコーやCT検査で発見されます。。進行すると、血尿、脇腹の痛み、発熱、体重減少といった症状が出ることがあります。確定診断には造影CTやMRI検査を行います。
転移がなければ、腎臓の部分切除や、腎全体の摘出を行います。最近は腹腔鏡やロボットを用いて手術を行うことが多くなっています。
転移を認めた場合は、分子標的薬という、抗がん作用をもった治療薬を用います。副作用として、高血圧、疲労、下痢、皮膚炎が生じることがあります。また、転移があっても腫瘍縮小による予後改善効果を期待して、腎癌の摘出手術を行うこともあります。
急性腎盂腎炎
一般的に症状の出現は急激で、発熱や、背部痛、血尿、寒気、吐き気、嘔吐を認めます。尿検査で白血球や細菌がみられ、血液検査では、白血球やCRPといった炎症反応の上昇を認めます。尿培養検査を行い、原因菌を同定し、その菌にあった抗生剤で治療します。多くは内服薬を使用しますが、高熱などの症状が強い場合には点滴を行うこともあります。
また、結石が尿管に嵌頓したことによる腎盂腎炎の場合は、尿管ステントという管を内視鏡を使って挿入する必要があります。
腎のう胞
腎臓にある液体の塊です。人間ドックや健診で偶然みつかることが多く、症状もないため治療の必要はありません。ただあまりに大きいと腹部や背部の圧迫感がみられることがありますし、外部からの衝撃でのう胞が破裂し、血尿や背部痛が出現することがあります。まれですが、感染を合併した場合には膿を出すためにのう胞を穿刺し液体を排出することがあります。
また、のう胞に隔壁、石灰化、造影剤による造影効果を認めるなど、典型的ではないのう胞の場合、腎臓がんが隠れていることがあり、注意が必要です。
多発性のう胞腎:両方の腎臓に非常に多くの嚢胞ができてしまう、遺伝性のある疾患です。初期に症状はありませんが、徐々に腎機能が低下し、60歳以上の半数の方が腎不全に至るとされています。高血圧や動脈瘤、心臓弁膜症を合併することもあり、治療の早期介入が必要です。
腎血管筋脂肪腫
腎臓に発生する腫瘍の一つで、ほとんどが良性です。結節性硬化症の方に多く合併します。
腫瘍が小さい場合は経過観察で問題ありませんが、大きくなると腫瘍が破裂して、腹痛、血尿を認めることがあります。
また、当初は良性と考えられていたものの、経過観察中に腎臓がんと診断されることもあり注意が必要です。